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怪文書置き場

2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

STBTYR 1-1

1. ライフル弾のいくつかが目標を逸れてシーナ=トーネルへと襲いかかり、彼女のすぐ近くで甲高い音とともに弾き返された。彼女の身に付けたブレスレットに施された反応性防壁(リアクティブシールド)の呪文が発動し、彼女を弾丸から守ったのだ。シーナは防壁…

STBTYR 1-2

2. 若い姿の両親が、子供の頃の、知恵も力もない頃のシーナを見下ろしていた。「正直に、誇りを持って生きなさい」「本家の連中はルノ族の誇りを捨て、自分を偽って生きているの」「お前はそうなってはダメだよ」 家の食卓で、暖炉の前で、小さな庭で、近所…

STBTYR 1-3

3. 「では、彼女の独唱を皆さんに聴いてもらうことにしましょう。彼女がリーダーに相応しいことは、すぐに分かっていただけるかと思います」 シーナの唐突な提案に、そのリーダー——十二歳ほどの少女だ——が戸惑っていた。何十人もの大人たちに囲まれて縮こま…

STBTYR 1-4

4. 十年前、シーナが十六歳のころだった。シーナは、カンダート伯爵が自分と歳の近い子供を養子にした、と聞かされ、伯爵の城に連れてこられた。 通された広間には、等身大の人形が何体も並べてられていた。どれも十代――シーナと、そしてこれから現れるだろ…

STBTYR 1-5

5. 礼拝技術部がカリンの次の指令を全面的にバックアップすると決まったことで、シーナの追加人員の要請はかつてないあっけなさで承認された。おかげでこの一週間でシーナの組んだ実験プランは予定より大幅に前倒しになった。マンパワーの集中投入により、真…

STBTYR 2-1

1. ルドノア共和国にとってこの十年ほどは、植民地時代の統治戦略に端を発する民族紛争と多国籍軍の強引な軍事介入が終わり、実質的な占領状態から民主化プログラムの実施を経てようやく訪れた、平和な時間だった。しかし『ルドノアの子どもたち』による伯爵…