deadtachibana.com

怪文書置き場

JNコンフィデンシャル 14/14

14 [小立 俊弘]

 おれのスペース:声優島の端。一般参加者はまばらだ――目の前の同人誌が手に取られたのは数回だった。おれの同人誌――事件に関するおれの告白。おれの懺悔。おれの――おれたちの妄動。白黒/五十ページ。血を吐くように書いた/叩きつけた/自白した。日の目を見ることはない――それでかまわない。キチガイどもへの弔い=おれたちの鎮魂歌。

 時間だ――スペースを撤収し、移動する――オービットの神奈川公演。

 拝島が哄笑する。憎悪を撒き散らす。

 

 ホールで自分の席を探す――あった。通路側の端――チケットは三人連番――だが、残りの二枚は空席になる。花山/泉のための席だった。会場はライブ直前――興奮の水準が刻々と上昇するのが感じられた。

「すいません、ちょっとそこ……」

 大学生か、ひょっとすると高校生か――二人組の少年が、おれの前を通って隣に―――花山/泉の席に座った。

「思ったより近いな」

「初めてのライブでこの席はまあまあなんじゃねーの?」

 少年たちは興奮抑えきれぬ様子で話している――おそらく、オービットのライブは初参加。

 おれの胸の中で、なにかが溢れそうなまでに水位を増していた。おれはうずくまった。

 花山。泉。おれ。キチガイどもは名もなき死人として埋もれ、また誰かがやってくる。

 会場を歓声が満たした――ライブが始まる。だがうずくまったおれにはなにも聴こえない。カウントダウン。曲が始まる。

『いつも一緒でも どこか遠くて――』

 声が聴こえる。遥の声が。

 おれは立ち上がった。ライブは始まったばかりだというのに、なぜだか涙が一粒、頬を伝って落ちた。